令和7年 6月定例会

市長招集あいさつ

 本日、第3回定例会を招集いたしましたところ、議員各位のご参集を賜り、厚くお礼申し上げます。
 まず初めに、このたび全国市議会議長会より、加藤明議員が30年在職議員として、矢野雄嗣議員が25年在職議員として、また、森京典議員が20年在職議員として、羽藤謙司議員が15年在職議員として表彰を受けられ、藤原秀博議員が社会文教委員会委員として感謝状を受けられました。
 このことに対しまして、改めてお喜びを申し上げ、今後ますますのご健勝とご活躍をご祈念申し上げますと共に、市政発展のため、一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 さて、新年度の幕開けは、「令和7年今治市林野火災」への対応から始まりました。今回の火災では、お隣の西条市を含め、焼損面積481.6ha、住家・非住家の被害は27棟、人的被害については、人命が失われることがなかったものの、4名の方が負傷され、平成以降、県内最大規模の林野火災となりました。
 大切なご自宅や財産に大きな被害を受けられた方々、被災をなさった皆様に、重ねてお見舞いを申し上げます。
 今後も引き続き、被災をされました皆様への支援に全力で取り組むとともに、これから迎える降水量が多い季節におきましては、土砂崩れなどの二次災害を未然に防止するべく、万全の体制で対応にあたってまいります。
 また、火災で焼失をしました森林を取り戻すまでには長い年月が必要となりますが、地域の皆様の想いをしっかりと受け止め、「林野火災復旧・復興計画策定検討会」での計画策定をはじめとし、関係機関と緊密に連携して、豊かな森林再生への歩みをしっかりと進めてまいります。

 続いて、5月22日から3日間にわたり開催されました「バリシップ2025」について、ご報告申し上げます。
 2年ぶり9回目の開催となりました今回のバリシップにおきましては、24の国と地域から、過去最多となる384の企業・団体が出展し、国内外から海事産業に関係するビジネスマンが日本最大の海事都市・今治に集結いたしました。展示会や各種フォーラムなどを通じて、活発な商談や情報交換が行われ、世界中に今治の海事クラスターの存在感を改めて印象づける機会となりました。
 今回、初の試みといたしまして「海事産業×IT」をテーマに、最新のイノベーションを結集したイベント「Flow(フロー)」を今治市の主催で開催いたしました。最新テクノロジーのプレゼンテーション、最新ロボットやAI製品の展示など、海とテクノロジーを掛け合わせたコンテンツが展開され、関係者の皆様からも大きな関心をお寄せいただきました。
 とりわけ、このイベントの中におきまして、愛媛大学の仁科学長から、令和8年度、工学部の中に「海事産業特別コース」を創設し、その拠点として今治市にサテライトを設置することが公式に発表されました。
 今治市にとっての長年の念願であり、「海事都市交流委員会」、そして「えひめ海事産業協働コンソーシアム」の皆様の、力強くもありがたい後押しによって、ようやく実現の運びとなったものでございます。
 愛媛大学ではすでにサテライトの開設の準備が始まっており、そして学生募集も来年4月の入学に向けて開始される予定と伺っております。本市といたしましても、大学と緊密に連携し、受け入れ環境をしっかりと整えてまいります。
 また、私は、5月30日から一週間、ノルウェーのオスロで開催された「ノルシッピング2025」を視察させていただく機会に恵まれました。
 ノルウェーは、ご案内のとおり世界有数の海運国としての地位を維持するため、国際競争力の強化に取り組んでおりまして、グローバルなネットワークと技術力によって、世界での存在感を発揮していることを強く感じた次第であります。
 そうした中、今治の海事産業が重要な役割を担っていることに、あらためて気づくことができた今回の訪問であり、ふるさと今治を、「瀬戸内の世界都市」として輝かせていかなければならないという想いが、より一層強くなったと感じております。

 続いてのご報告でございます。本市では、令和5年度に「今治市ゼロカーボンシティ宣言」を行って以降、脱炭素社会の実現に向けまして、様々な施策を着実に進めてまいりましたが、この度、環境省により、本市が愛媛県内では初の「脱炭素先行地域」として選定されました。
 国際的にも知名度が高い「しまなみ海道」と「今治タオル」という、2つの地域固有の資源を、ソフト・ハードの両面から脱炭素化し、ブランド価値を向上させ、観光振興策等の強化を図り、交流人口の拡大による島しょ部の活性化、ひいては地域経済の活性化に取り組んでいくものでございます。
 こうした取組みを着実に実現していくことにより、「今治市ゼロカーボンシティ宣言」にも謳ってございます、将来世代に気候変動のツケを残さず持続可能な社会を実現する、すなわち『気候正義』の理念を貫いてまいります。
 本市の脱炭素への挑戦に対し、引き続きご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

 一方、市民の皆様にとりまして、大変関心の高い、「県立今治病院」の移転新築につきまして、5月28日、愛媛県の中村知事から、整備に関する予算案を6月補正予算に計上することが発表されました。
 この発表に先立つ5月8日には、今治市医師会長の木本会長とともに知事を訪問し、「安定した医療提供体制、救急体制などのために早期移転は必要である」との要望を行い、さらに今治市として、看護師の確保や関係施設整備に関する協力について提案させていただきました。
 知事からも「地元が一体となって取り組む姿勢が確認できた」との言及があり、昨今の建設費の高騰など厳しい状況の中、今治圏域の地域医療を守るため、大変ありがたい決断をしていただいたと受け止めております。
 今治市といたしましては、引き続き愛媛県と今治市医師会と緊密に連携を取りながら、一日も早い移転・新築の実現に向け、全力で取り組んでまいる所存でございます。

 また、電気・ガスなどのエネルギーをはじめ、食料品等の価格上昇は、依然として続いており、市民生活に大きな影響を及ぼしております。
 こうした厳しい状況を踏まえ、本年3月市議会でご承認いただきました「いまばり暮らし応援券事業」としまして、「全国共通おこめ券」を6月7日より、すべての市民の皆様へ順次、発送してございます。「令和の米騒動」とも呼ばれる昨今の米価の高騰に直面する中、家計の負担を少しでも緩和するため、急ピッチで発送を進めてございますので、お手元に届くまで今しばらくお待ちいただきますようお願いいたします。

 さて、本定例会におきましては、「令和7年今治市林野火災」への対応といった「直面する課題」解決に向けた施策、さらに、インバウンドによる観光振興や多文化共生社会の実現、中心市街地グランドデザインの推進といった「瀬戸内の世界都市づくり」に向けた施策についてご提案させていただいてございます。
 本市は、林野火災という極めて困難な事態に直面いたしましたが、この経験を糧とし、「STAGE CHANGE」のスローガンのもと、「脱・衰退」を実現し、愛する「ふるさと今治」を確かなカタチで次の世代に引き継いでいけるよう、引き続き、全庁一丸で取り組んでまいります。
 議員各位におかれましても、今後とも一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げ、開会にあたりましてのご挨拶とさせていただきます。

市長 提案理由説明

 この度の定例市議会におきましては、令和7年度補正予算案をはじめ、当面する市政の諸案件につきましてご審議いただくこととなってございますので、よろしくお願い申し上げます。

 新年度の幕開けは、「今治市林野火災」からの対応で始まりました。平成以降、県内最大規模の林野火災となってございます。こうした状況を受け愛媛県では先月に、国に向けまして令和8年度重点施策の提案・要望活動を行われましたが、早速「林野火災への支援の充実・強化」を最重要項目の一つとして、取り上げていただいてございます。
 本市におきましても、引き続き、被災地域の復旧・復興に全力で取り組んでいるところでございますが、鎮火から2か月あまりが経過し、これまでの「緊急事態・応急対応」から「復旧・復興対応」へと新しいフェーズに移る時期であると認識してございます。
 こうした状況を踏まえ、本定例会におきましては、引き続き、「令和7年今治市林野火災」などの直面する課題への対応と、また一方で、「瀬戸内の世界都市づくり」に向けた、積極的な施策もご提案させていただいてございます。

 それでは、本日提案申し上げました案件の主なものにつきまして、私が公約に掲げる政策の柱に沿い、ご説明申し上げます。

直面する課題への対応

 はじめに、直面する課題への対応でございます。
 まず、林野火災への対応です。被災地域周辺の応急復旧および二次災害防止につきまして、現在、出水期における民家への被害が想定されます被災地域周辺の見守りや土のうの設置、支障木や土砂の撤去等に努めておりまして、その必要経費を計上するものでございます。
 次に、被災をされました世帯の生活再建や事業者の事業再建を後押しするため、金融機関等から融資を受けられた場合に、その利子相当額を市が全額助成し、支援いたします。
 被災された世帯が金融機関から災害復旧ローンを借り入れた場合、その利子相当分を最大10年間、そして被災された市内事業者が事業再建に係る資金を金融機関等から融資を受けた場合、その利子相当額を最大5年間分、市が全額助成いたします。
 続きまして、林野火災を教訓とした災害対策の充実・強化についてでございます。  今回の林野火災は、今治市にとって過去に例をみない規模の災害でございまして、鎮火に至るまで、消防関係者をはじめ、災害対応に従事いただいたすべての方々が、ベストを尽くしていただいたと考えておりますが、一方で、浮き彫りとなった様々な課題の一つとして、火災現場の最前線における消火活動の様子や被害状況がリアルタイムで把握できていたのかという点がございます。
 この課題につきまして、外部から有識者をお招きし、検証等を行う会議の開催を予定しており、そこで改善すべき点を洗い出すとともに、これからの豪雨・台風シーズンに備えるため、情報共有システムを導入するなど、出来ることから一つひとつ取り組んでまいります。

人が元気になる『まち』に

 次に、人が元気になる『まち』にでは、共生社会のさらなる充実に向けた予算を計上してございます。
 多くの外国人が居住する本市において、誰もが住み続けたいと思える「輝くまち」を実現するために、本市では初の試みとなる外国人居住者を対象としたアンケート調査を実施いたします。
 今治市には、松山市に次いで県内2番目に多い約4,400人の外国人の方が居住しており、中国や韓国はもとより、フィリピン、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、ネパールと様々な国籍の方が、文化や風習の違いに戸惑われることもあるとお聞きしております。
 このため、同調査では、外国人居住者が日常生活を営む上での課題や潜在的ニーズ等を掘り起こし、今後の施策へ反映してまいりたいと考えております。

産業に活力を与える『まち』に

 続いて、産業に活力を与える『まち』についてでございます。
 まず、i.i.imabari!のパワーアップの項目におきまして、首都圏での更なる「今治ファン」の獲得を目指し、東京・渋谷の大規模複合施設「サクラステージ」に、本市の魅力発信拠点、仮称でございますが、「×(かける)いまばりLab(ラボ).」を開設いたします。
 これまでにも、本市は関係人口の拡大に向け多様な取組を実施してまいりましたが、「×(かける)いまばりLab(ラボ).」の開設によって、今後は単発的なイベントの実施にとどまらず、一定期間継続した、あるいは複数のアプローチを組み合わせた取組が可能となり、首都圏における本市の訴求力・営業力を高め、多くの人とのつながりを生み、より一層の関係人口拡大につながるものと大いに期待しております。

 次に、新・今治のみなとづくり・まちづくりの項目におきましては、令和8年度から愛媛大学工学部に「海事産業特別コース」が創設されることを受け、その機運を醸成するためのシンポジウムを開催いたします。「海事産業特別コース」の創設は、海事都市・今治にとって大変大きなプロジェクトと期待しておりますので、今後とも大学と緊密に連携し、受け入れ環境をしっかりと整えてまいります。

 次の、強い農・林・水産業づくりの推進におきまして、市内生産者の負担軽減と持続可能な生産体制の維持を図るため、県内における野菜の広域選果及び物流体制の再編に伴う新たな広域選果 集・出荷施設の整備や、有機農業の省力化、取組面積の拡大等を図る取組について、それぞれ支援するものでございます。

 続きまして、「住み続けられる」魅力あるまちづくりに関する取組としまして、物産・観光分野それぞれの興味・関心層を相互の分野に誘導する「クロスユース誘発キャンペーン」の実施に加え、マーケティングデータの分析・活用、宿泊施設の現場改善に対する伴走支援を実施し、新たな需要創出や誘客促進に繋げようとするものでございます。
 また、インバウンド受入のための環境整備に取り組む市内飲食店、宿泊・観光施設を支援し、本市に訪れる外国人観光客等の利便性や快適性の向上、誘客促進や多文化共生社会の実現に向けた環境整備を図ってまいります。

今治時間のある、輝く『まち』に

 続いて、今治時間のある、輝く『まち』ににつきましては、瀬戸内の世界都市づくりに向けた取組の一環としまして、中心市街地グランドデザインを推進してまいります。
 まず、官民連携による中心市街地のまちづくりを推進するため、今治版ネウボラ拠点施設をはじめとする公共公益施設の整備に関する計画の作成やプロジェクトの事業化に向けた調整、関係者間の合意形成など、事業の中核的な役割を担う組織としまして「都市再生協議会」を設置いたします。
 また、国の「地域力創造アドバイザー制度」を活用し、招聘するまちづくり、コミュニティづくりの専門家の助言や指導をいただきまして、エリア活性化のための方針を検討するほか、民間主体のまちづくりを推進する仕組みや、その担い手づくりに取り組んでまいります。
 こうした事業のほか、社会資本整備総合交付金の内示に伴い、市道「高地延喜線」及び「今治駅高橋線」の事業費を増額し、早期の供用開始を目指して、着実な事業の進捗を図ってまいります。

 次に、アート&カルチャー&スポーツのまちづくりに向けまして、サイクリストの拠点機能を含め、インバウンドをはじめとした多様なニーズに対応した賑わい創出を目指し、専門家等によるサポート体制を構築し、サンライズ糸山及び周辺市有地の一体的利用に向けた方策検討を進めてまいりたいと考えております。
 さらに、インバウンドのサイクリストが増加している状況を踏まえ、世界に誇るナショナルサイクルルートを有する、茨城県土浦市、滋賀県守山市、そして今治市の3市が連携し、各ルートを巡るプレミアムなインバウンドツアープログラムの造成に取り組み、日本のサイクリングの最高峰としてブランド力を持続的に高めるツアー販売やプロモーションを実施してまいります。

 また一方で、大阪・関西万博で9月6日に開催予定の「パナマナショナルデー」において、本市の伝統芸能「継ぎ獅子」とパナマの伝統舞踊が共演し、姉妹都市パナマ市との友好関係のさらなる促進を図るとともに、「継ぎ獅子」の魅力を世界に向けて発信してまいります。

 このほか、ふるさと納税制度を活用しました「FC今治サッカー専用スタジアム建設プロジェクト」に基づく建設費の一部助成を行います。財源は全額、ふるさと納税を原資に積み立てたスポーツ振興基金からの繰入金でございます。
 なお、スタジアム建設に要しております経費は約40億円で、そのうちの約9億5千万円がふるさと納税を活用した助成となってございます。

しなやかで強靭な『まち』を実現

 続いて、しなやかで強靭な『まち』を実現するため、南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備え、住家の被害認定調査支援システムを県内他の市町と共同して構築することで、被災後に必要となる罹災証明書の発行に要する時間の大幅な短縮を図ろうとするものでございます。
 このほか、県営土地改良事業として実施される歌仙ダムの取水施設補修工事に併せて、下流域の氾濫被害リスクの軽減を図るため、歌仙ダムに堆積した土砂の浚渫を行うこととしてございます。

 

 この結果、今回の補正予算額は、一般会計 5億2,996万円でございまして、本年度予算の累計額は、全ての会計をあわせて1,402億6,536万円となってございます。
 この補正予算につきましては、国・県支出金や市債などの特定財源を充当することといたしております。

 以上が補正予算の概要でございますが、このほか、温浴施設の使用料を改定する条例案のほか、消防の救助工作車の更新にかかる契約議案などを提出してございます。

 ご提案いたしました事業の執行により、「令和7年今治市林野火災」など直面する課題への対応と、地域資源を生かした観光振興や多文化共生社会の実現、中心市街地グランドデザインの推進など、「瀬戸内の世界都市づくり」に向け、全力を傾注してまいります。

 以上で、本日提案申し上げました議案の説明を終わらせていただきます。ご審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

市長閉会あいさつ

 6月定例市議会の閉会にあたりまして、ご挨拶を申し上げます。
 議員各位におかれましては、今議会に提案いたしました諸案件につきまして、全て滞りなく議決を賜り、誠にありがとうございました。
 審議の過程でいただきましたご意見、ご提言につきましては、今後の市政運営にあたり十分留意してまいりたいと存じます。

 観測史上最も早い梅雨明けの発表となり、連日、厳しい暑さが続いています。今定例会で、實成議員から、厳しさを増す夏の屋内外での活動における熱中症対策についてのご提案、そして注意喚起をいただきました。「命を守るインフラを整えられるのであれば、それは費用ではなく責任です」との言葉をしっかりと受け止め、あらためて、熱中症対策のための環境整備をできるところから順次進めてまいります。
 市民の皆様におかれましては、水分、塩分の補給に加え、エアコンの適切な利用など、熱中症予防に十分ご留意いただきますよう、お願い申し上げます。
 また、昨年の6月定例会で丹下議員からご提案のあった、クーリングシェルター「バリCOOL」につきましては、1年前、12か所の開設でスタートいたしましたが、現在では、58か所までその輪が広がっております。
 本市のクーリングシェルターへの取組は、開設数も多く、オンラインでの指定申請も可能にするなど、独自の取り組みを進めてきたことが評価をされ、独立行政法人環境再生保全機構から、全国の優良事例としてご紹介いただいてございます。
 熱中症は、あらゆる世代の方々の健康に影響を及ぼす深刻な問題でございますが、適切な予防や対処により、重症化を防ぐことが可能です。どうか危険な暑さからご自身やご家族の身を守るため、熱中症予防行動とあわせて、本市の「バリCOOL」を積極的にご活用いただきたいと思います。

 さて、今治の夏の風物詩である市民のまつり「おんまく」の開催まで、いよいよ1か月を切りました。今年は、時期を同じくして、丹下健三顕彰事業「~世界のTANGE~特別展」が、8月2日から、市内の3つの会場で同時に開幕いたします。
 昨年6月、フランス・パリで開催されました「丹下健三と隈研吾展 東京大会の建築家たち」に出席する機会に恵まれた折、隈研吾先生から「展覧会を今治で開催すれば、これからの地方を牽引する展覧会になる。ぜひ、協力させてもらいたい。」という力強いお言葉を頂戴しました。そして、展覧会の会場では、今治市庁舎本館と公会堂、市民会館の模型が展示されており、当時、丹下先生が思い描いた今治市の町割り、そのスケールの大きさ、まちづくりに込めた情熱に、私自身、大きな感動を覚えたことを、昨日のことのようにハッキリと記憶してございます。
 丹下先生の没後20年を迎えた本年、一般社団法人 国立代々木競技場世界遺産登録推進協議会にご協力をいただき、パリでの展覧会をさらにパワーアップした凱旋帰国展を丹下先生のふるさと今治で開催できることは、非常に意義深いものと考えております。
 3つの会場では、それぞれ市内の建築美術の魅力を国内外へ発信する特別展示を行います。市民会館では、中心市街地や庁舎、公会堂、市民会館の模型などを展示し、河野美術館では、マンガを切り口に丹下先生の生涯や今治との関係などを紹介させていただきます。玉川近代美術館におきましては、代々木競技場や丹下先生の自邸などの模型、当時の貴重な写真などを展示する予定でございます。
 なお、本事業は、文化庁の「日本博2.0」に採択され、現在開催中の大阪・関西万博とも連動したインバウンド集客も期待されるところです。
 今から70年ほど前、当時の田坂敬三郎市長が、幼なじみであった丹下先生にこのまちの夢と未来を託し、現在の今治市には丹下先生のまちづくりの理念が息づいています。市民の皆さん、そして次世代を担う今治の子どもたちが、丹下先生の思い描いたまちづくりの息吹に触れることで、生まれ育ったまちに関心を持ち、誇りを感じていただけるきっかけになることを、心から願っております。

 3月の林野火災で、私たちのまちは、極めて困難な事態に直面いたしました。しかしその一方で、人と人、人と地域を結ぶかけがえのない「絆」や一体感が、随所に生まれています。
 炊き出しや後片付けなど、被災された方々を支援してくださった多くのボランティアの皆様。「ふるさと今治」に思いを馳せ、募金活動に取り組んでくださった市内県立高校の生徒の皆さん。さらには、能登の輪島市からは、いまだ復興の途上の中にあるにもかかわらず、現地でボランティア活動に従事をしていたFC今治高校里山校の生徒たちに、思いを義援金という形で託していただくなど、いずれも、このまちの未来に、希望の光を灯していただきました。

 今なお、被災された皆様がご不便な暮らしを余儀なくされておりますこと、また、長年にわたり大切に育んできた豊かな森林を失ったことは、市政をお預かりする立場として、身を切られる思いであり、本当に申し訳ない気持ちでございます。
 それでも、こうした温かな絆に支えていただきながら、今治市は歩みを止めることなく、そしてここに暮らす私たち一人ひとりもしっかりと前を向き、確かな希望の一歩を踏み出すことができました。
 改めて、このたびの林野火災に際し、多大なるご支援、ご協力を賜りましたすべての皆様に、厚く御礼申し上げます。

 今議会で賜りました諸課題に対する施策などにつきましては、国・県の支援をいただきながら、着実に進めるとともに、事業効果の最大化・早期発現に向け全力で取り組んでまいりますので、今後とも、一層のご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、閉会にあたりましてのご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

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