令和7年 9月定例会

市長招集あいさつ

 本日、第4回定例会を招集いたしましたところ、議員各位のご参集を賜り、厚くお礼申し上げます。
 まず初めに、去る8月21日に開催された「JICAアフリカ・ホームタウンサミット」において、本市がモザンビーク共和国の「ホームタウン」として認定を受けたことにつきましては、市内外の多くの方々からご懸念の声が示され、8月26日に記者発表を行い、私自身から経緯のご説明と正確な情報をお伝えさせていただきましたが、この場をお借りして、あらためてご報告をさせていただきます。
 今回の認定は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が主催する「アフリカ・ホームタウン」事業の枠組みで行われ、日本の自治体とアフリカ諸国との関係を強化し、国際交流を推進するものであり、双方の発展に寄与することを目的として実施されています。
 しかしながら、認定に際し、国の内外で事実と異なる報道や発信がなされ、SNS等を通じて拡散され続けた結果、市民の皆様にも大きなご心配をおかけいたしています。「移民が増えて治安が悪化する」「外国人に特別な在留資格を与えられる」「領土が外国に譲渡される」といった内容の批判が多数お寄せいただいてございますが、この事業の目的に鑑みて、いずれも事実ではないことを明確に表明させていただきます。
 今回の認定は“移民受け入れ制度”ではなく、あくまでも国際交流の枠組みであり、ましてや領土・権限の譲渡を意図するものではございません。
 事実に基づかない情報が拡散いたしましたのは、相手国政府の事実と異なる発信や一部海外メディアの不正確な表現が要因の一つであったと考えております。
 本市とモザンビークは、JICAが提案した取り組みの趣旨を相互に理解したうえで、認定を受けております。本市がモザンビークとの交流を深める背景には、海事産業を通じた交流がございます。昨年7月に今治で開催した海事フォーラムにおいて、同国の運輸通信大臣がお越しになり、植物由来のバイオ燃料による海事産業の脱炭素化について意見交換を行いました。その後も同国要人の来訪を受け、信頼関係を築いてまいりました。こうした経緯を踏まえ、今回の認定に至ったものでございます。
 今後は、具体的な取り組みについて、相手国や関係機関と協議を重ね進めてまいります。人材交流につきましても、専門分野に限定した計画的な往来を想定しており、「大量流入」や「移民促進」といった性質のものでは一切ございません。
 なお、本市は今回の事案を受け、事業を主催するJICAに対し、(1)事実に基づかない情報が発信された経緯の検証、(2)取り組みの趣旨・目的のより丁寧な発信、(3)「ホームタウン」という名称の見直しの検討、(4)今後の有意義な国際交流に向けた支援体制の充実について、要請をさせていただいたところでございます。  当然ながら、市民の皆様の安全・安心を確保することは、市政の最優先事項でございます。今後は、適切な情報発信に努めてまいりますので、市民の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
 また、本市にはすでに4,000名を超える外国籍の方が居住されており、地域の産業を支える貴重な人材として、また今治家の大切な家族の一員として日常生活を送られています。本市においては多文化共生の理念のもと、外国人の皆様が日本の文化になじみ、国籍にかかわらず、日本人も外国人も安全に生活できるよう取り組みを進めてございます。今回の件でご不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、どうかご安心いただき、冷静にご対応をいただければと思います。

 次に、節水のお願いです。今年の四国地方は、観測史上最も早い6月中の梅雨明けとなりました。
 今治市では、7月以降の降雨量も例年に比べて非常に少なく、8月9日から11日にかけて「恵みの雨」が降りましたものの、水源である玉川ダムの貯水率は期待していたほど回復せず、本日午前9時現在で60.4%と、平年をおよそ20ポイント下回っております。
 今後の天候によりましては渇水が懸念されますことから、市民の皆様には、どうか無理のない範囲で節水にご協力いただきますようお願い申し上げます。

 一方で、9月に入りましても、依然として厳しい暑さが続いており、熱中症のリスクも高まっています。県内では梅雨明け以降、実に40回もの熱中症警戒アラートが発表され、本市におきましても224名の方が熱中症で救急搬送されております。水分、塩分の補給に加え、エアコンの適切な利用など、熱中症予防に十分ご留意いただきますよう、お願いいたします。
 また、熱中症による健康被害を防止するため、暑さを一時的にしのげる避難場所としまして、市役所本庁及び支所、公民館、民間施設など、市内60か所を、クーリングシェルター「バリCOOL」として指定いたしております。どなたでもご利用いただけますので、積極的にご活用いただきたいと思います。

 さて、今年も第28回今治市民のまつり「おんまく」が、盛大に開催されました。「PASSION ~情熱~」をテーマに、各所で繰り広げられた踊りの輪、郷土芸能の響き、そして夜空を彩った「おんまく花火」のフィナーレは、まさに市民の心をひとつにする瞬間であったと感じています。ご尽力いただきました関係各位、市民の皆様に心から感謝申し上げます。
 この「おんまく」の熱気が冷めやらぬ翌日には、今治を舞台とした小説『汝、星のごとく』の作者、凪良ゆうさんに、今治エール大使「IMABALINA Ambassador」を委嘱いたしました。
 本作品につきましては、本年7月に映画化が決定されたという、大変嬉しいお報せをいただいたところです。作中の重要な場面に「おんまく花火」が登場するなど、スクリーンを通じて本市の魅力が広く発信される大きな契機となることを期待いたしております。2026年の全国上映を市民の皆様と共に、心待ちにしたいと思います。

 最後に、今治市の未来のまちづくりに向けた道しるべとなる丹下健三顕彰事業「世界のTANGE特別展」を市民会館、河野美術館、玉川近代美術館の3館で同時に開催いたしております。ここでしかご覧いただけない貴重な展示品や、丹下先生が思い描いたまちづくりの息吹に触れられる大変貴重な機会となっております。さらに、来週の13日(土曜日)には建築家の隈研吾先生、丹下先生のご子息で建築家の丹下憲孝けんこう先生をお迎えし、顕彰シンポジウムを開催する予定でございます。
 こうした顕彰事業を通じて、市民の皆様に、丹下先生の思い描いたまちづくりの理念にあらためて触れていただくことで、生まれ育ったまちに関心を持ち、誇りを感じるきっかけにしていただくことを、心から願っております。そして、10年後、20年後に振り返ったときに、「あの時の特別展とシンポジウムが、今治のまちづくりの転機だった」と語っていただけるような未来を目指してまいりたいと考えています。
 今治市民にとって、中心市街地に、丹下建築があることは当たり前の風景なのだと思います。そのような「ふるさと今治」の何気ない景色、魅力を守り、育て、輝かせていくために、私たちはこれからも挑戦を続け、今治の未来を紡いでまいります。
 これからも、皆様のご理解とご協力を賜りながら、今治の可能性を最大限に引き出すまちづくりを進めてまいりますので、引き続き、今治の歩みに温かいご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

 さて、本定例会におきましては、引き続き、「令和7年今治市林野火災」への対応といった「直面する課題」解決に向けた施策のほか、子育て支援や教育、介護、産業振興、公共交通、脱炭素など、多岐にわたる分野で市民の皆様の生活を支える施策についてご提案をさせていただきます。
 本市には、合併20周年を踏まえ、多くの皆さんに気づいていただいた豊かな自然、歴史、文化、そして人の温もりがあります。「ふるさと今治」を確かなカタチで次の世代に引き継いでいけるよう、「STAGE CHANGE」のスローガンのもと、「脱・衰退」を実現するため、引き続き、全庁一丸となって取り組んでまいります。
 議員各位におかれましても、今後とも一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げまして、開会にあたりましてのご挨拶とさせていただきます。

市長 提案理由説明

 この度の定例市議会におきましては、令和7年度補正予算案をはじめ、当面する市政の諸案件につきましてご審議いただくこととなっておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 9月補正予算の編成にあたりましては、引き続き、「令和7年今治市林野火災」に対応する所要の経費など、直面する課題への対応と、市民生活を支えるための多岐にわたる分野での施策をご提案させていただいてございます。

 それでは、本日提案申し上げました案件の主なものにつきまして、私が公約に掲げる政策の柱に沿って、ご説明申し上げます。

直面する課題への対応

 はじめに、直面する課題への対応でございます。令和7年今治市林野火災への対応。
 まず、被災地域の復旧・復興に向けた取組として、発災から1年を迎える令和8年3月に植樹イベントを開催するための必要経費を計上をしております。
 また、来年5月17日に愛媛県で開催予定の全国植樹祭において、イオンモール今治新都市がサテライト会場として設置されることを受け、林野火災の復旧・復興の状況を広く周知するための記録映像の作成経費も盛り込んでございます。

 次に、今回の林野火災で浮き彫りとなった課題への対応として、現在、有識者をお招きし、検証会議を進めておりますが、「避難所スペースの確保」、「福祉避難」、「ペット避難」などへの対応を検証するため、防災士が主体的に取り組む訓練を実施し、学びや共感を通じてスキルアップを図ろうとするものでございます。
 さらに、火災現場における消火活動や被害状況をリアルタイムで把握できていたかという課題に対し、消防本部と災害対策本部間で円滑な情報共有を図るため、情報伝達機器の導入を進めるなど、できることから一つひとつ、着実に取り組んでまいります。

人が元気になる『まち』に

 続いて、人が元気になる『まち』にでございます。
 子育ての理想郷の実現に向けた取り組みとして、現在、市内在住で満1歳から小学校就学前までのお子さんを2人以上養育されているご家庭を対象に、無償で電動アシスト付幼児2人同乗用自転車の貸し出しを行っております。ご希望される子育て世帯の方も多く、貸出台数が不足している状況を踏まえ、今回、新たに貸出台数を増やし、子育て支援と日常での自転車活用を進めてまいります。

 また、通学距離や地理的条件などにより通学が困難な事情を抱える市内高校生の通学支援といたしまして、これまでも愛媛県の「えひめ人口減少対策総合交付金」を活用し、公共交通機関の定期代の一部を助成させていただいておりましたが、今回さらに支援メニューを拡充し、通学距離が概ね7キロを超える高校生を対象に、通学用電動アシスト自転車の購入費用の一部を助成させていただきます。このことにより、通学負担と子育て世帯の経済的負担の軽減を図ろうとするものでございます。

 さらに、今治型学校教育の推進のため、英語を公用語とする海外都市と国際交流協定を締結し、産業や教育分野での国際交流を推進いたします。次世代を担う子どもたちがグローバルな感覚を身につけられるよう取り組むとともに、ALTを活用した英語教育の充実も図ってまいります。

 また、健康・医療・福祉の都市づくりについて、介護人材の確保が喫緊の課題となる中、外国人介護人材を受け入れている市内介護事業所に対し、受入環境整備に要する費用を愛媛県の事業と連携し、支援をさせていただくことにより効果的な人材確保を目指してまいります。

産業に活力を与える『まち』に

 次は、産業に活力を与える『まち』についてでございます。
 産業のDX・GX支援につきましては、利用者の利便性向上を図るため、市内バス事業者が運行状況をリアルタイム配信できるシステム導入に必要な経費を助成いたします。

 続いて、強い農・林・水産業づくりの推進につきまして、まず、米の競争力強化や麦・大豆などの生産性向上、さらにはこれらの地域生産体制強化の取組を支援し、市内の水田農業の生産力強化を図ってまいります。
 さらに、県の振興計画において重点品目でもある「さといも」や「いちご」については、省力化機械や環境制御システムの導入を支援し、収益性の高いモデル産地の確立を目指します。
 また、枝物類の栽培に必要な苗木や雑草対策資材の導入を支援し、安定した出荷体制を整えることで農業収益の向上を図ります。
 畜産分野におきましては、畜産クラスターの仕組みを活用し、施設改修を支援することで生産基盤の維持強化を、さらに、造林事業を支援し、森林の多面的機能を維持・増進することで、環境保全と地域資源の持続可能な活用を推進してまいります。

今治時間のある、輝く『まち』

 次に、今治時間のある、輝く『まち』についてでございます。
 公共交通ネットワークの再構築により、地域における公共交通の手段を確保していくことは、住民の生活の質を維持するうえで不可欠なものでございます。特に、交通空白地域や高齢化が進む島しょ部では、移動手段の確保が喫緊の課題となっており、このため、自家用車を活用して有償で行う旅客運送サービス、いわゆる「公共ライドシェア」に加え、貨物輸送を組み合わせた「貨客混載」による実証事業を伯方島で実施いたします。本事業は、地域の実情に即した最適な公共交通の形を検討することを目的としており、四国初の試みとなるものでございます。今後は、実証結果を踏まえ、持続可能な公共交通ネットワークの構築に向けた方策を検討してまいります。

 続きまして、「ゼロカーボンシティ・今治」の推進のため、本市の特性を生かした脱炭素化の取組を加速する事業を展開してまいります。
 まず、しまなみ海道ブルーラインメイン沿線、いわゆる「脱炭素先行地域」において、家庭や事業所、今治タオル産業群を対象に、太陽光発電設備や蓄電池、HEMS(ホームマネジメントシステム)、給湯器などの導入を支援することで、エネルギーの地産地消を促進します。
 加えて、事業所に対しては、脱炭素化に必要な設備投資を後押しするため、愛媛県の融資制度を活用した際の利子補給を行い、資金調達の負担を軽減し、より多くの事業者が脱炭素化に踏み出せる環境を整えてまいります。
 さらに、市内全域の一般住宅を対象に太陽光発電設備の導入を支援し、電気代の削減と家庭のエネルギー自給率向上を目指します。
 令和5年11月に表明させていただきました「ゼロカーボンシティ宣言」を契機に、昨年は、環境省の地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制構築モデル事業に加え、そして本年5月には、愛媛県内で初めて、国の「脱炭素先行地域」に選定され、さらに8月には、環境省の「令和7年度コスト競争力強化を図る再エネ等由来水素サプライチェーンモデル構築・FS事業」に採択されるなど、脱炭素社会実現に向け、着実に歩みを進めてございます。こうした取組を通じて、市民の皆さまの暮らしの安心と地域産業の競争力強化を両立させ、ゼロカーボンシティの実現に向けた歩みを着実に進めてまいります。

 また、「しまなみ海道通行料実質無料化」を深掘りする中で、島しょ部地域に居住し、市内の高等教育施設に通う学生を対象に、通学に要する経費の一部を助成することで、島しょ部における教育環境の充実と、若者の定住促進を図ってまいります。

しなやかで強靭な『まち』に

 続いて、しなやかで強靭な『まち』にするために、しまなみ海道に架かる跨道橋の撤去工事に関し、本四高速株式会社に委託して実施する工事について、期間及び委託料の変更を行います。また、林野火災対応に関する再掲事項を含め、引き続き防災・減災対策を強化してまいります。

 最後に、工業用水道事業会計につきましては、安定的な経営を継続するため、保有する定期預金の一部を活用し、資金運用を行うものでございます。今後も持続可能な事業運営を目指し、適切な会計管理に努めてまいります。

 

 この結果、今回の補正予算額は、一般会計 9,002万9,000円でございまして、本年度予算の累計額は、全ての会計あわせて1,407億5,538万9,000円となってございます。 この補正予算につきましては、国・県支出金や市債などの特定財源を充当することといたしております。

 以上が補正予算の概要でございますが、これらのほか、今治市職員の育児休業等を改定する条例案のほか、防災行政無線システムの更新にかかる契約議案などを提出してございます。

 ご提案いたしました事業の執行により、「令和7年今治市林野火災」などの直面する課題への対応や、子育て支援、教育環境の充実など、更なる今治の魅力創出に向け、全力を傾注してまいります。

 以上で、本日ご提案申し上げました議案の説明を終わらせていただきます。ご審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

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