令和6年度 施政方針

 本日、第2回定例会を招集いたしましたところ、議員各位におかれましては、ご参集いただき有難うございます。

 開会に当たりまして、令和6年度の施政方針を述べさせていただきたいと思いますが、その前に、去る1月1日に発生した能登半島地震により、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
 今治市におきましても、現地の被害状況が明らかになってきた1月5日に災害支援本部を立ち上げ、これまでに災害マネジメント支援員や事務職員、保健師、水道の技術職員などを派遣しております。
 また、企業・団体からご協力をいただき、義援金や「今治タオル」などの支援物資を被災地の皆様にお届けするとともに、1日あたり最大で1,200人分の生活用水が供給できる「車載型の浄水装置」を現地に搬入し稼働させるなど、様々な支援を行っております。
 今後も被災者の方々に寄り添い、必要な対応を適時適切に実施してまいりますとともに、改めて本市における防災・減災対策の総点検を行い、思い切った事業展開を図りたいと考えておりますので、議員各位におかれましても、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

1 はじめに

 さて、昨年5月に新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に移行され、本格的なアフターコロナ時代に向けて「さあ、これから」というなかでの能登半島地震の発生、まさに正月気分が吹き飛び、私たちが直面している厳しい現実を改めて実感した次第でございます。
 世界に目を向けますと、ロシアによるウクライナ侵略が長期化し、加えて、中東では軍事衝突が起こるなど世界情勢はますます混沌としております。加えて、異常気象や自然災害が相次ぎ、地球環境の脆弱性を改めて実感するとともに、再生可能エネルギーの普及やSDGsへの取組の必要性が急速に高まってきています。さらには、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが加速し、生成AIが仕事や生活の場においても普通に活用される時代になってきました。
 また、我が国におきましても少子高齢化や人口減少、物価高騰、人手不足といった深刻な課題が山積しております。

2 これまでの3年間

 私は3年前に、市政の舵取りを任せていただいて以来、市民の皆さんにお約束をした公約の3本柱、すなわち、「『市民が真ん中』の視点で今治市役所を市民の役に立つ超スマート自治体に変革」していくこと、「瀬戸内クロスポイント構想により稼ぐ力を高め『商いができる』今治を実現」すること、「今治版ネウボラの推進や防災・減災対策などにより『ひとりひとり』が輝く今治をみんなで創り上げる」こと、この3つの政策の柱を中心とする様々な施策の展開に市民の皆様のお力をお借りをしながら精一杯取り組んでまいりました。
 私が「今治に新しい風を吹かせたい」との強い思いで市長選への出馬を決意し、この公約を練り上げてから早いものでもう4年近くが経過しました。その間も、時々刻々と世の中は変化してきており、当然ながら、それに合わせて公約を柔軟に見直すことも必要となってまいります。
 特に、人口減少対策、物価高騰対策、DX・GXの促進、働き方改革、中心市街地の再生、合併20周年を迎えるにあたっての地域の魅力創造、防災・減災対策などについては、これまで以上に力を入れて取り組むべき新たな課題であるとの認識のもとで、具体的な対応を開始しているところでございます。

3 仕上げの年

 令和6年度は私にとって市長就任から4年目、いよいよ総仕上げの年となります。行政運営は思っていた以上に幅が広く奥も深い、様々なことが絡み合っています。良かれと思って進めようとしても、そのことで別のところに悪影響が出る、公平性が損なわれるといったことも多くあります。
 そうした現実に直面しながらも、様々なことに対して手探り状態で検討を開始した1年目、組織体制を整えながら出来る部分から具体的な事業を打ち出し始めた2年目、そして、公約実現に向けて大きく前進するために必要な「種まき」をしっかりと進めてきた3年目、こうした3年間を経て、いよいよ4年目、公約実現の最終フェーズに入るわけでございまして、令和6年度当初予算には「4年間の総仕上げ」となる思い切った事業を盛り込んだところでございます。

 それでは、3年前に私が市民の皆さんにお約束をした「公約の3つの柱」に沿って、今治の明るい未来を切り拓くための市政運営に関する考え方や、職員とともに積み上げてきた令和6年度当初予算に込めた私の思いを述べさせていただきます。

4「市民が真ん中」の視点で市民の役に立つ市役所

 まずは公約の1つ目の柱、「『市民が真ん中』の視点で市民の役に立つ市役所へ」についてでございます。
 市民生活においては、市役所本庁並びに支所から遠方にお住いの方がアクセスしやすい場所まで専用の車両が訪問し、行政サービスをお届けする「移動市役所」が先月、運用を開始しました。多彩な機能を搭載し、支所周辺地域や商業施設等を巡回し地域をむすび、皆さんの傍に寄り添う“便利で優しい”市役所を展開してまいります。新年度は、住民窓口の多様化を一層推進するとともに、広報広聴活動の強化、今治の魅力の戦略的発信に努めます。
 また、島しょ部地域においては、昨年9月に着工した「しまなみ総合庁舎」が本年11月に完成予定であり、3島の総合的な行政運営機能を担う拠点として、しまなみエリア全体を俯瞰し、これまで以上にきめ細やかで、しかも攻める、質の高い市民サービスを提供してまいります。
 加えて、移転後の「伯方支所跡地」につきましては、民間主導による「地域のにぎわい拠点づくり」に向けた整備が進められており、両地区がしっかりと機能分担しながら有機的に連携することで、しまなみ全体の輝きが一層増すものと期待しているところでございます。

5「商いができる」今治の実現と魅力あるまちづくり

 次に、公約の2つ目の柱、「瀬戸内クロスポイント構想により稼ぐ力を高め『商いができる』今治を実現」するとともに、「魅力あるまちづくりを推進」することについてであります。
 世界に冠たる海事産業、世界を魅了する今治タオルをはじめ、魅力ある多くの産業を擁する「ものづくりのまち今治」が輝き続けていくためには、人材を育て、熟練の技術を次の世代につないでいくと同時に、生産性を上げ競争力を高めていかなければなりません。
 このため、昨年10月に立ち上げた「今治イノベーションコンソーシアム」を核として、「AI人材の育成」「スタートアップの育成・誘致」そして「オープンイノベーションの推進」の3つを強力に推進してまいります。
 加えて、企業が新たな技術や人とつながり、人材を育て、新しいものを次々と生み出していくための支援拠点を今治地域地場産業振興センターに整備し、地場産業におけるデジタルイノベーションを加速させ、地域経済の発展と市民所得の向上につなげてまいります。
 さらには、デジタル地域通貨の導入に向け、庁内横断的な検討会議を設置し、市民生活のデジタル実装に向けた実証と効果の検証を行い、地域経済とコミュニティの活性化による持続可能で豊かな地域づくりを目指すなど、時代の変容に応じたDX推進にもスピード感をもって挑戦させていただきます。

 一方で、本市に点在する豊かな自然やアクティビティなどの地域資源を生かした観光振興や移住交流施策などを進めるとともに、2年連続4冠を果たした「住みたい田舎ベストランキング」において、引き続き選んでいただける魅力的なまちとしての取組を拡充します。
 また、今月に予定している「オーガニックビレッジ宣言」を踏まえて、他の自治体に先駆けたオーガニック先進地としての新たな施策を展開してまいります。

 「しまなみ海道通行料金の実質無料化」についても、新たな取組を始めます。私がこのことを公約に掲げたその想いは、12の地域が1つの家族として暮らす中で、高速道路や船を使わなければ陸地部に移動できない島しょ部地域の皆さんにしっかりと寄り添い、可能な限りその負担を軽減したいとの強い思いから生まれたものでございます。
 これまでに、しまなみの子どもを育む交通費支援事業をはじめ、しまなみ暮らし支援事業による燃料クーポンのほか、デジタル技術を活用した本庁・支所間オンライン相談窓口の整備など、数々の実質無料化につながる負担軽減策を講じてきております。
 また、当面の課題であった「令和6年度問題」、しまなみの通行料金において、期間限定の特別措置として適用されている割引制度の期限がこの3月末で切れてしまうという我々にとっては非常に大きな問題についても解決の目途が立ったところでございます。
 このため、今後は「実質無料化」の新たなフェーズとして、全庁挙げての検討組織を設置し、これまで実施した交通動向調査やしまなみ暮らしアンケートの分析結果などを基に、関係機関とも連携を図りながら、様々な角度から実質無料化並びに利用促進につながる具体的かつ効果的な方策を検討してまいります。

 さらには、「今治市にとって百年の計」となる中心市街地の再開発についても着実な検討を進めてまいります。昨年4月に新たな組織として「魅力都市創生課」を設置し、本格的な議論をスタートさせたところですが、新年度は、中心市街地まちづくり構想の将来ビジョンの実現に向けた具体的な施策と手法を示す「今治市中心市街地グランドデザイン」の策定に着手するなど、目に見える形で中心市街地の未来像をお示ししたいと考えています。

 来年の1月16日には、平成の大合併により12の市町村が一つになった今治市が、合併20周年の節目を迎えます。「むすんだ絆、つながる未来」をキャッチフレーズに、これまでの20年を振り返りながら、これからの20年、未来の今治の「あるべき姿」を市民の皆さんと共に描き、このまちの恵まれた海・山・島が秘めるポテンシャルを最大限引き出せるよう、合併20周年記念事業により様々な仕掛けを講じてまいります。
 市民の皆さんお一人おひとりが、ふるさと今治を誇りに思い、色とりどりの種を蒔き、未来に大輪の花を咲かせ、やがて立派な実をむすぶよう、個性豊かな12の地域それぞれが持つ伝統、文化、食、そして人と人とをしっかりとつないでいくことが、未来の今治の発展には不可欠であると確信しています。

6「ひとりひとり」が輝く今治づくり

 最後に、公約の3つ目の柱は、「今治版ネウボラの推進や防災・減災対策などにより『ひとりひとり』が輝く今治をみんなで創り上げる」ことでございます。
 昨年12月22日に国立社会保障・人口問題研究所が将来推計人口を公表いたしました。ショッキングな数字に驚かれた方も多いと存じます。2050年の愛媛県の人口は133万人から94万4千人に、今治市の人口は15万人から、なんと10万人を割り込んで9万9千人にまで減少するという推計でございます。こうした人口推計は社会経済情勢が激変しない限りは、ほぼ外れることはない数値でございます。
 子どもの減少、生産年齢人口の減少、高齢者の増加によって、この先、地域経済の活力減退、社会保障費の負担増、学校の統廃合、交通空白地の増加といった課題が顕在化することとなります。本市といたしましては、この人口減少を少しでも抑えるため、諦めることなく、様々な努力を積み重ねる必要がございます。
 具体的な対策として、誰もが安心して子どもを産み育てられる環境づくりが急務であることから、今治版ネウボラの取組の強化はもとより、「えひめ人口減少対策重点戦略」に基づく愛媛県の交付金も活用し、引き続き、出会い・結婚支援や妊娠・出産支援、子育て支援等のきめ細やかな少子化対策の拡充を図ります。
 さらには、学生等のUIJターン就職の促進や、市内企業の魅力を広く発信する取組に加えて、今治に縁のある方のお力もお借りしながら、移住・定住につながる関係人口の拡大に向けた移住交流施策の一層の充実を図り、人口の自然減、社会減の双方に歯止めをかける取組を粘り強く進めてまいります。
 また一方では、現実を直視し、26年後、人口10万人にまで縮小した都市経営をどうするのかということにつきましても、真剣に議論を開始する必要があると考えています。

 私が公約で打ち出した目玉事業の1つが「今治版ネウボラの推進」でございます。新年度からは、妊娠期から18歳までのお子さんがいる全ての家庭に寄り添い伴走型の支援を行うための「こども家庭センター」を設置し、社会福祉士や看護師、保健師等の専門職を配置することで、妊産婦を巡る様々な課題に多職種で対応できる体制を強化します。
 また現在、今治版ネウボラ拠点施設整備の基本計画を「今治市子ども・子育て会議」において議論していただいており、今月中には答申をいただく予定でございまして、今後はそれを踏まえ、拠点施設の整備に向けた本格的な取組をスタートさせたいと考えております。
 加えて、その拠点施設を補完するための先行事業といたしまして、大型商業施設内に「サテライト窓口」となる子育て支援拠点を整備し、子育てに関する相談や交流の場を拡充するとともに、「遊び場サテライト」としまして、公園を新たに整備するなど、市内全域で、安心して子育てできる環境の充実を図ってまいります。

 現在、「未来を担う子どもたちの“学びの充実”」を図るため、学校施設において小中学校の照明の一括LED化や、理科室、音楽室への空調設備の設置を進めています。
 新年度はこれらに加え、「質の高い授業づくり」を推進するため、学習アシスタント等の学校スタッフの増員や、岡山理科大学などの学生ボランティアを活用した探求型学習の取組を進めます。
 さらには、児童生徒に生きた英語を提供するため、小中学校への、いわゆるALTの増員に加え、新たに外国人講師による楽しみながら英語を身に付ける「イングリッシュキャンプ」をスタートさせ、低学年層から、そして幅広い児童生徒を対象とした英語教育の充実を図り、絶えず英語が周りにあるような環境を創出します。

 能登半島地震を教訓とし、「防災・減災対策」の強化にも取り組みます。様々な自然災害が激甚化、頻発化している状況を踏まえ、災害対策本部の機能強化や、有事の際に生活用水として利用可能な耐震性防火水槽などの防災拠点整備のほか、指定避難所の安全対策、大規模災害に対応した各種計画の見直し、防災ドローンパイロットの養成や、地域の防災力向上への取組など、市民の命を守る万全の備えに努めてまいります。

 以上が、私の市政運営の基本方針と、主な重点施策の概要でございます。

7 むすびに

 私たちのふるさと今治には「力強い産業」「豊かで多様な自然」「郷土愛溢れる今治人」という3つの大きな「成長エンジン」があります。これをベースに、瀬戸内海の“へそ”に位置する立地条件を活かし、地域経済循環を促進する「瀬戸内クロスポイント構想」を推進することで、今治の「にぎわい」や「豊かさ」を創出し、人口減少時代にあってもしっかりと自立のできる「今治の未来」を切り拓いていきたいと念願しています。
 多くの皆さんから「今治市役所には風が吹き始めた。今治市は変わり始めている。」そんな声をお寄せいただいております。私は、絶えず自問自答しています。今治市役所は変わったのか。今治市役所は変わろうとしているのか。
 私は、市役所職員にも意識改革を求めています。職員一人ひとりが「昨日の延長が今日で、今日の延長が明日」という考え方を改めるとともに、市民の皆さんの声なき声をしっかりと汲み上げ、様々な支援策を打ち出してほしい。市役所が一丸となって知恵を絞り、足元の情勢の変化、将来の新たな課題に機動的に対応しながら、市民の皆さんの暮らしと経済の回復を全力で後押ししてほしい。
 このことにつきましては、私自身が先頭に立って、職員とともに取り組んでまいります。
 市長就任の際、人生の先輩方から、市長という仕事は駅伝ランナーのような存在だと聞かされたことがございます。
 本県に縁のある詩人・坂村真民先生の「あとから来る者のために」という詩のなかに、

 あとから続いてくる あの可愛い者たちのために
 みな それぞれ自分にできる 何かをしてゆくのだ

という一節があります。
 いつの時代も変化があるところにチャンスが生まれます。これからの大きな変化は、若い世代の方々にとって大きく飛躍するチャンスになると思います。先人の弛まぬ努力の積み重ねにより築き上げられてきた「今治」がさらなる発展を遂げ、次の世代へしっかりと襷がつながるよう、今治の未来のために、あとから来る者のために、すべての市民が力を合わせて精一杯の努力を重ねて行ければと考えています。

 私は「傾聴と市民参画」を基本に、ぬくもりのある「市民が真ん中」の理念、そして信念と気配りを貫いてまいります。そして持続可能なまちづくりを一歩でも前に、市民の幸せを一つでも多く実現できるよう、決意新たに、令和6年度も全身全霊で市政運営に努めてまいりますので、市民の皆様、そして、議員各位におかれましては、格別のご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、開会のご挨拶とさせていただきます。

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