令和8年度 施政方針

 本日、第2回定例会を招集いたしましたところ、議員各位におかれましては、ご参集をいただきありがとうございます。

 開会に先立ち、世界的自転車メーカーであるGIANT社の創業者、りゅう金標きんぴょう様のご逝去の報に接し、衷心より哀悼の意を表します。
 愛媛県、そして、今治市のサイクリング施策が大きく動き始め、しまなみ海道が国際的なサイクリングルートとして認知されるようになったのは、今から15年前、平成23年11月に、中村知事が台湾のGIANT社を訪問、当時の劉会長と対談されたことが契機であったと言われております。
 その翌年には、「日台交流 瀬戸内しまなみ海道サイクリング」が開催され、劉会長をはじめ多くの台湾の皆様が、しまなみ海道を走破されました。その後には、今治駅前へのGIANTストア直営店の開設、台湾を代表するサイクリング拠点「日月潭」と「しまなみ海道」との姉妹自転車道協定締結など、台湾との交流は着実に拡大し、現在も台湾から毎年多くのサイクリストが本市を訪れていただいておりますことは、多くの市民の皆さんの知るところでございます。
 「自転車は単なる移動手段ではなく、人々に“健康”と“生きがい”と“友情”をもたらしてくれる。」この劉会長の教えを、中村知事が「自転車新文化」という形で受け継ぎ、
 今、その理念は、愛媛県から全国に広がっております。
 劉会長が示された「自転車による持続可能な社会づくり」という理念を胸に、今治市は今後も、しまなみ海道を核とした自転車新文化のさらなる発展と国際交流の深化に全力で取り組んでまいります。

 それでは、令和8年度の当初予算案等をご審議いただくにあたり、開会あいさつとしまして、まず、私の施政方針、市政運営に臨む基本的な考えや主要施策について述べさせていただきます。

1 はじめに

 はじめに、国内外の社会経済情勢に対する私の認識についてでございます。
 世界に目を向けますと、大国間の競争が激化し、安全保障に加え、経済面でも関税の引き上げが他国への圧力の手段として用いられるなど、ルールに基づいて保たれてきた国際秩序は大きな転換点を迎えております。
 また、国際紛争の長期化や世界経済の構造変化、気候変動、物価高騰、人手不足など、複合的な課題が同時に進行し、市民生活や地域経済にも影響を及ぼしてきております。

 一方、国内では、高市内閣のもと「責任ある積極財政」が進められようとしております。そのなかで日本成長戦略17分野の1つに「造船」を位置付けていただき、国の大きな後押しをいただけることになりましたことは、本市にとって大きな追い風であり、この機を捉え、造船・舶用産業を基幹とする「海事都市今治」の強みを最大限に活かし、地域経済全体の競争力向上と安定した雇用創出につなげてまいりたいと思います。

2 市政運営の基本理念

 次に、これからの市政運営にあたりましての、基本認識と基本理念についてでございます。
 私たちが直面をしている最大の危機は、急速に進行する人口減少であります。これは本市に限らず、全国の自治体が共通して抱える、避けては通れない社会課題となっています。
 先般の愛媛県人口減少対策推進本部会議では、2060年の県人口は、対策を講じなければ現在の125万人から半減し、65万人になるとの推計が示されました。この減少率を、そのまま今治市に当てはめた場合、今から34年後、2060年の今治市の人口は7万5千人にまで減少してしまうことになります。

 本市は令和6年に「消滅可能性都市」から脱却できたものの、人口減少は進んでおり、決して安心できる状況ではありません。人口減少は、医療、教育、産業、防災など、あらゆる分野の基盤を揺るがし、本市の持続可能性に大きな影響を及ぼします。
 このため、国や県との連携を図りつつ、本市独自の視点で地域の実情に即した機動的な対策を講じ、人口減少の流れを少しでも食い止め、将来世代につながる持続可能なまちづくりを進める必要があると思います。
 とりわけ、子育て支援の強化や若者・女性の定着促進、雇用の創出など、市民の暮らしに直結する分野では、「今できることはすぐやる、すべてやる」という覚悟をもって取り組んでまいります。
 また、人口減少社会を前提とした「賢く縮んだ地域づくり」も重要です。人口が減る時代だからこそ、暮らしや行政サービスの質をいかに維持・向上させ、地域の価値をいかに高めていくのかが問われています。本市は本年1月、「住みたい田舎ベストランキング」において、4年連続・全4部門で1位を獲得しました。「今治時間」に集約されるこの地域の豊かさは、外部から高く評価されていますが、この流れを確かな人口回帰へとつなげていかなければなりません。

 私はこれまで5年間、市民の声に耳を傾ける「傾聴」と、市民とともに進める「市民参画」を柱に、「市民が真ん中」の市政運営に取り組んでまいりました。
 今治の未来を決める主役は市民であり、行政は市民の挑戦を後押しする“補助エンジン”であるとの考えのもと、今後も、職員一人ひとりが「市民が真ん中」の視点に立って、何故出来ないか、ではなく、どうしたら出来るのか、を考え、行動し、市政を前に進めてくれることを期待しております。

3 令和7年度を振り返り

 ここで、令和7年を振り返らせていただきます。昨年は、本市にとって大きな試練と学びの一年でございました。
 3月の林野火災は、消防・自衛隊・緊急消防援助隊をはじめ多くの関係者の献身的なご尽力により鎮火に至りましたが、災害が暮らしの根幹を揺るがす脅威であることを改めて認識し、「備えること」「意識すること」の重要性を痛感いたしました。頻発する自然災害に備えること、何気ない日常を守ること、市政の安定は、防災という土台なしには成り立たないことを、今治市全体で学んだ出来事でありました。
 また夏には、JICAアフリカホームタウン制度で本市がモザンビークのホームタウンに認定されたことをきっかけに、大きな混乱が生じました。意義ある国際交流を目指した取組が、事実と異なる情報の拡散によって、市民の皆様に不安や誤解を招く事態となりました。この経験を通じて、行政がいかにして正しい情報を迅速に市民の皆様にお伝えするのか、悪意のある誤った情報にどう対処すべきか、そうしたところへの備えの重要性を身に染みて感じたところでございます。
 一方で、明るいニュースもございました。昨年8月から、丹下健三先生の顕彰事業の集大成としまして、「世界のTANGE特別展」を開催し、新しい今治のまちづくりに向け「大きな一歩」を記すことができました。
 また、昨年6月に策定しました中心市街地グランドデザインによって、今治市が目指すまちのイメージを、市民の皆様と共有することができ、ネウボラ施設など、未来のまちづくりへ向けた中心市街地の再生がスタートしました。
 その意味で、昨年は「顕彰から創生」へ、まちづくりのフェーズが大きく動いた一年、今治の未来に向けた「新しいまちづくり元年」ともいうべき年になったと思います。

4 令和8年度組織改正に込めた思い

 次に、新年度の市政運営にあたりまして、その土台となる市役所の組織再編のうち、大きな改正2点についてご紹介いたします。
 まずは、非常勤特別職の「参与」を設置させていただきます。参与の職務は「市長の特命事項を処理する」とされておりまして、具体的には、林野火災の教訓や南海トラフ地震を想定した「防災・危機管理」業務と、今後、事業が本格化する「中心市街地の再生」業務を担ってもらうこととなります。
 2点目は、急速に変化する社会情勢に的確に対応するため、新たに市長公室を設置し、次長級の市長公室長を配置いたします。
 市長公室は、「秘書広報」「未来デジタル」「交通政策」「防災危機管理」の4分野を統括する市長直轄の体制とすることで、部局の枠を超えて、市民の声と時代の要請に応じた施策を迅速に展開してまいります。
 その他の組織改正についての説明は省略させていただきますが、すべては「STAGE CHANGE」を実現するための基盤づくりの一環でございます。市役所自らが変化を恐れず、新たな価値を生み出す組織へと転換し、令和8年度が、市民の皆様にその成果を実感いただける一年となりますよう、全庁一丸となって取り組んでまいります。

5 公約で示す政策の柱(5つの戦略)

 今治市は今、確実に変わり始めています。国内外から「今治に住みたい」「今治で挑戦したい」という声が多く寄せられるなど、本市のプレゼンスは大きく高まっています。
 私は、この追い風をしっかりと捉え、「脱・衰退」にむけて全力で挑戦を重ね、今治を「瀬戸内の世界都市」へと押し上げてまいります。
 さらに、新たに策定しました第3次今治市総合計画のもと、「瀬戸内しまなみから世界へ 夢が行き交うまち IMABARI~みんなのふるさと、つむぐ未来~」という将来像の実現に向け、市民の皆様とともに未来を描く取組を本格的に進めてまいります。

 それでは、私が公約に掲げた「5つの戦略」に沿って具体的な考えを述べさせていただきます。

Ⅰ 「考動する市役所」がある『まち』に

 まず1つ目の戦略は、市役所の政策アンテナ機能を強化し、より『考動する』組織へと進化させる取組です。
 市役所が「考えて動く」組織として、市民の皆様とともに課題解決に取り組むため、市役所の組織と職員一人ひとりが、地域の課題や市民の声を敏感にキャッチする「政策アンテナ」を高く掲げ、的確に市政へ反映させる力を磨くことで、「考動する市役所」としての役割を果たしてまいります。
 そのために、「Z世代」「α世代」の若者や女性の声を丁寧に拾い上げ、ふるさと今治への愛着を感じ、「いつかは戻りたい」、「関わり続けたい」と思ってもらえるよう、多様な市民が政策づくりに参画する取組を本格稼働してまいります。

Ⅱ 人が元気になる『まち』に

 戦略の2つ目は、「人が元気になる『まち』を実現し、ひとりひとりが輝く今治」をつくる取組でございます。
 私が市長就任当初から一貫して掲げてまいりました「今治版ネウボラ」は、“誰もが安心して子どもを産み、育てられるまちを実現する”という、市政の根幹となる公約であり、子育ての理想郷を今治につくるという強い決意の象徴であります。
 これまで、「子どもが真ん中親会議」や中高生のアンケート、市民ワークショップなどを通じて、市民の皆様の声を丁寧に伺い、その思いを反映しながら基本構想・基本計画の検討を進めてまいりました。その長年の議論がいよいよ形となり、「今治版ネウボラ拠点施設整備」が本格始動いたします。屋内遊び場や学び・交流の場を備え、市内の子育て支援を牽引する中核拠点として、「子どもが真ん中」のまちづくりを象徴するランドマークとなるものであります。「子育てするなら今治」と胸を張れる、未来への大きな一歩となると確信しています。
 さらに、この施設を起点として、市内各地に整備を進めているサテライト拠点や公園、民間施設ともネットワークを結び、市内全域で切れ目のない支援が受けられる体制を構築してまいります。

Ⅲ 産業に活力を与える『まち』に

 3つ目の戦略は、「瀬戸内クロスポイント構想を強力に推進し、産業に活力を与える『まち』」を創出することでございます。
 「産業とは、むすびわざである」これは、私の母校の建学の理念です。人と技術、地域と世界、一次産業と製造業、観光と文化、そしてリアルとデジタル、これらを結び、新たな価値を生み出す営みそのものが産業なのです。
 瀬戸内クロスポイント構想は、瀬戸内の“へそ”に位置する今治の地の利を最大限に活かし、「資金」「消費」「投資」といったお金の流れに加え、「人の流れ・人口回帰」を生み出そうとするものであり、海事産業、今治タオル、農林水産、しまなみ観光といった今治の強みを、新たな人・技術・文化と“むすび”直し、地域経済循環をより強固なものへと進化させてまいります。
 また、昨年6月に策定しました中心市街地グランドデザインは、若い世代を含む多様な方々と3年間にわたり議論を積み重ねてきた「未来への設計図」であり、今後は、このグランドデザインを具体化していく「創生」フェーズに本格的に移行します。
 公共空間の再編整備に向けた検討を深め、中心市街地の中で一体的な回遊と活動を生み出す都市の再構築を図ってまいります。
 一方で、中心市街地の再生は、行政単独では成し得ません。グランドデザインに込められた市民の思い、そして願いを原動力に、公民連携による総力戦で、魅力ある中心市街地の実現に向け力強く取り組んでまいります。

Ⅳ 輝く『まち』に

 戦略の4つ目は、「未来の市民が誇れる、輝く『まち』」を創り上げることです。
 人口減少が進み、地域経済や都市機能の維持が課題となる中、本市では、市民の皆様から「今治が、まちが確かに動き始めている」との声が聞こえるようになってまいりました。この変化の兆しを確かな流れへと押し上げ、持続可能な都市として未来に輝きを引き継ぐために、今こそ都市基盤・産業基盤の強化に果敢に取り組んでまいります。
 国際海事都市として発展してまいりました本市にとって、産業展示や国際会議、見本市などを開催できるMICE施設の整備は、世界とつながり、地域の未来を切り拓くために不可欠な「戦略インフラ」であります。
 海事産業の皆様からも、今治港周辺整備やMICE機能の必要性について力強い思いをお寄せいただいておりますが、今治市といたしましても将来を見据えた重要な示唆として受け止め、その声にしっかりお応えさせていただきたいと考えております。本施設が、多様な人々が集い、学び、交流する拠点として、地域と世界、そして未来を力強く結び、持続的な賑わいの創出と幅広い分野への経済波及効果をもたらすとともに、次代を担う人材の育成につながる場となりますよう、丁寧かつ着実に検討を進めてまいります。
 加えて、新年度4月から、愛媛大学工学部に海事産業特別コースが新設され、3年次から今治地域地場産業振興センターで本格的な研究がスタートします。
 大学の高度な知と、海運・造船・舶用機器、デジタル技術など業界の最先端技術が融合する、新たな海事イノベーションの中核拠点となるものであり、学生・研究者・技術者が集い、現場と研究が一体となる好循環が生まれますことを期待しています。
 若い人材が地域で学び、活躍する、「地元回帰・定着」を確かな流れとするため、本市といたしましても研究環境整備や学生支援に全力で取り組んでまいります。

Ⅴ しなやかで強靭な『まち』に

 最後に、5つ目の戦略は、「しなやかで強靭な『まち』」をつくることでございます。

 近年、線状降水帯や短時間強雨の頻発により、想定を超える浸水被害が相次いでおります。本市も例外ではなく、過去10年間で147件の浸水被害が確認されるなど、私たちの暮らしは新たな気候リスクに直面しています。
 加えて、能登半島地震や本市で発生しました林野火災の教訓は、いかなる災害においても、「自助」「共助」「公助」がかみ合う体制なくして、市民の生命と財産を守ることはできないという厳しい現実を私たちに突きつけました。
 従来の延長線上ではなく、AI・デジタル技術の活用をはじめ、老朽インフラの計画的な更新、防災意識の“底上げ”を同時並行で進め、市民の皆様が日常の中で「安全・安心」を実感できる、しなやかで強靭なまちづくりを、ハード・ソフトの両面から全力で推進してまいります。

 以上が、私の市政運営の基本方針と、主な重点施策の概要でございます。

6 むすびに

 昨年1月、私たちのまちは「大 今治家」の誕生から20年の節目を迎えました。
 合併20周年記念事業では多くの市民の皆様にご参加いただき、新たな地域の絆が生まれましたように、今治には、人と人がつながり支え合う力が息づいており、その力は何よりの宝物です。

 ネウボラ拠点施設、合同庁舎、MICE施設、中心市街地グランドデザインなど、令和8年度から始まる施策には、将来を見据えた大きな投資が伴います。
 これらについて、議会並びに市民の皆様からも財政への影響についてご懸念の声をお寄せいただいておりますが、中長期財政収支見通しの中で「財政の健全性は十分に保たれる」との試算を示してございます。

 「未来の今治を引き継ぐ子どもたちのために、私たちがいま選び取る決断が、未来を形づくっていく」
 先送りできない課題に正面から向き合い、必要な政策と投資を同時に行うことこそ、未来を生きる子どもたちへの責任であります。

あとから続いてくる あの可愛い者たちのために
みなそれぞれ自分にできる何かをしてゆくのだ

 この坂村真民先生の詩は、まさに私たちが目指すべき道を示しているのです。
 今を生きる私たちが進める政策の一つひとつは、すべて「あとから来る者のため」に考え、実施するものであり、中心市街地グランドデザインに限らず、教育環境の充実や、防災力の強化、森林の復興も、すべて未来の今治への投資なのです。

 今を生きる誰もが経験したことのない時代だからこそ、挑戦する勇気・決断が求められています。
挑戦なくして未来への希望は生まれません。私は、これから10年先、20年先、50年先の今治市の未来を見据え、多くの挑戦に踏み出してまいります。

 私たちのまちは「市民が真ん中」です。
 この理念に共鳴いただき、「自分事としてまちの未来を語り」、「行動に移す」市政をともに進めて行こうではありませんか。子どもたちが、今治に生まれたことを誇りに思い、「未来は明るい」と胸を張って言える、そんな今治を、私たちの手で創りあげて行こうではありませんか。
 そのために、私自身が先頭に立って汗をかき、令和8年度を今治の「未来に向けて動き始める一年」とする決意でございますので、市民の皆様、そして議員各位におかれましては、格別のご理解・ご協力を賜りますようお願い申し上げまして、開会にあたりましてのご挨拶とさせていただきます。

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