○今治市食と農のまちづくり条例
平成18年9月29日
条例第59号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 食の安全性の確保と安定供給体制の確立(第4条―第19条)
第3章 地域農林水産業の振興(第20条―第24条)
第4章 食と農のまちづくりへの参画(第25条―第27条)
第5章 その他(第28条―第34条)
附則
合併前の旧今治市は、昭和63年3月に「食糧の安全性と安定供給体勢を確立する都市宣言」を決議し、安全な食べ物の生産と健康な生活の推進に努めてきた。市町村合併により新しい今治市が誕生し、再び「食料の安全性と安定供給体制を確立する都市宣言」が決議された今、私たちは、新しい宣言の実行を決意し、地域資源の活用と市民の健康を守る地産地消、食の安全、環境保全を基本とした食と農のまちづくり及びそのための食育の実践を強力に推し進めることを目標にこの条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、食と農林水産業を基軸としたまちづくり(以下「食と農のまちづくり」という。)についての基本理念を定め、市の責務並びに市民、農林水産業者及び食品関連事業者等の役割を明らかにし、基本的な施策を定めることにより、市民が主体的に参画し、協働して取り組むまちづくりの推進を図り、豊かで住みよい、環境の保全に配慮した持続可能な地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 食 食料、食材、料理、飲食等の広範な食をいう。
(2) 食品関連事業者等 食品の製造、加工、流通、販売又は飲食の提供を行う事業者及びその組織する団体をいう。
(3) 地産地消 地域資源の活用と流通過程のロスの低減を目指し、市内で生産された安全な食料を市内で食することをいう。
(4) 有機農業 化学的に合成された肥料及び農薬を使用せず、かつ、組換えDNA技術を利用しないで、農地の生産力を発揮させるとともに農業生産による環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を用いた農業をいう。
(5) 食育 様々な経験を通じて食に関する知識及び食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てることをいう。
(6) 遺伝子組換え作物 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)第2条第2項に規定する遺伝子組換え生物等である作物その他の栽培される植物をいう。
(基本理念)
第3条 食と農のまちづくりは、地域の食文化と伝統を重んじ、地域資源を活かした地産地消を推進することにより、食料自給率の向上と、安全で安定的な食料供給体制の確立を図るものでなければならない。
2 食と農のまちづくりは、食を活用することにより、市の産業全体が発展し、食と農林水産業の重要性が市民に理解され、家庭及び地域において食育が実践されるように行われなければならない。
3 農林水産業は、農地、森林、漁場、水その他の資源と担い手が確保されるとともに、生態系に配慮した自然循環機能が維持増進され、かつ、持続的な発展が図られなければならない。
4 農山漁村は、多面的機能を活用した生産、生活及び交流の場として調和が図られなければならない。
第2章 食の安全性の確保と安定供給体制の確立
(基本的な施策の指針)
第4条 市は、食と農のまちづくりに関する施策の策定及び実施にあたっては、基本理念に基づき、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ、総合的かつ計画的に行わなければならない。
2 市長は、食と農のまちづくりに関する施策を効果的に行うため、基本計画を定めなければならない。
(食の安全性の確保等)
第5条 市長は、市民が安心して食生活を営むことができるように食の安全性の確保を図るため、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和25年法律第175号)に基づく、品質、生産の方法及び流通の方法に関する認証制度並びに愛媛県特別栽培農産物等認証制度の普及に必要な施策を講ずるものとする。
(啓発及び情報の提供)
第6条 市長は、食と農のまちづくりの啓発活動を行い、市民及び食品関連事業者等の意識の向上を図るものとする。
2 市長は、食と農のまちづくりの実施及び評価に関する情報を市民に公表するものとする。
(地産地消の推進)
第7条 市は、農林水産業者及びその関連する団体等(以下「農林水産業者等」という。)による安全な食料の生産の拡大及び食品関連事業者等による安全な食品の製造、加工、流通及び販売の促進並びに市内の安全な食の消費の拡大を図るため、地産地消の推進に必要な施策を講ずるものとする。
2 市は、学校給食の食材に安全で良質な有機農産物(有機農業によって生産された農産物をいう。以下同じ。)の使用割合を高めるよう努めるとともに、安全な今治産の農林水産物を使用し、地産地消の推進に努めるものとする。
3 市は、学校給食の食材に遺伝子組換え作物及びこれを用いて生産された加工食品を使用しないものとする。
(食育の推進)
第8条 市は、市民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むための食育を実践することを推奨するものとする。
2 市は、食と農のまちづくりの持続的な発展を目指し、将来のまちづくりの担い手を育成するため、生涯食育推進の施策を講ずるものとする。
3 教育及び保育、介護その他の社会福祉、医療及び保健に関する職務に従事する者並びにこれらの教育等に関する関係機関及び団体は、基本理念にのっとり、積極的に食育を行うよう努めるとともに、他の者の行う食育の推進に関する活動に協力するよう努めるものとする。
(有機農業等の推進)
第9条 市は、基本理念にのっとり安全な食料の生産を促進するため、有機農業及び持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)第2条に規定する持続性の高い農業生産方式を推進する。
2 市は、有機農産物及び持続性の高い農業生産方式によって生産される農産物の生産の振興及び消費の拡大を図るために必要な措置を講ずるものとする。
(遺伝子組換え作物の栽培許可)
第10条 市内における遺伝子組換え作物の栽培状況を把握し、遺伝子組換え作物と有機農産物又は一般の農産物の混入、交雑等を防止するとともに、交雑を受けた農産物が種苗法(平成10年法律第83号)による権利侵害に係る混乱を防止するため、市内において遺伝子組換え作物を栽培しようとする者は、あらかじめ、市長の定める事項を記載又は添付して市長に栽培の申請をし、許可を得なければならない。
2 前項の規定は、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第2条第6項に規定する第2種使用等であるものについては、適用しない。
4 市長は、第1項の許可に必要な条件を付することができる。
(1) 当該申請に係る混入交雑防止措置、自然界への落下及び飛散を防止する措置が適正でないと認められるとき。
(2) 許可の申請を行おうとする者(以下「申請者」という。)が申請通りの措置を的確に実施するに足りる人員、財務基盤その他の能力を有していないと認められるとき。
(3) 申請者が、第15条の規定により許可を取り消され、その取消しの日から起算して2年を経過しない者であるとき。ただし、2年を経過した者であっても、取消しの原因究明、違法状態の是正及び再発防止策の有効性が認められない者も同様とする。
(5) 申請者が法人である場合において、その法人の業務を執行する役員が前2号のいずれかに該当する者であるとき。
(6) 遺伝子組換え作物の交雑の防止に関し、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律に規定される主務大臣の承認を受けていないとき。
2 前条の許可を行う栽培期間は、1年以内とする。ただし、市長が特に適当と認める場合は、この限りでない。
(説明会の開催)
第12条 申請者は、申請前に、当該申請に係る内容を周知するため、説明会を開催しなければならない。
2 前項の規定により説明会を開催しようとする者は、その責めに帰すことができない事由で説明会が開催できない場合は、市長が指定する方法に従って周知を図るとともに、市長が定める者の意見を聴かなければならない。
(許可者の遵守事項)
第13条 第10条第1項の許可を受けた者(以下「許可者」という。)は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) ほ場又は栽培しようとする施設(以下「ほ場等」という。)ごとに栽培を適正に管理する責任者を配置すること。
(2) 当該許可に係る混入交雑防止措置を適正に行うこと。
(3) 栽培した遺伝子組換え作物の処理、収穫物の出荷等に関する状況を記録し、及びその記録を3年間保管すること。
(4) 許可を受けた栽培に係る遺伝子組換え作物と同種の作物又はその他の作物との交雑の有無を確認するための措置を講ずるとともに、当該措置による交雑の有無の確認の結果を、栽培が終了した後、遅滞なく、市長に報告すること。
(5) 混入若しくは交雑が生じた場合は、直ちに、その拡大を防止するために必要な措置を講じ、又は混入若しくは交雑を生ずるおそれがある事態が発生した場合は、直ちに、これらを防止するために必要な措置を講ずるとともに、その状況を市長に報告し、その指示に従うこと。
(6) 遺伝子組換え作物の栽培を開始し、栽培を休止し、又は廃止したときは、その日から7日以内にその旨を市長に届け出ること。
(許可事項の変更)
第14条 許可者が、その許可の内容を変更しようとする場合は、あらかじめ、市長に申請し、変更の許可を受けなければならない。ただし、規則で定める軽微な変更の場合は、届け出により変更の許可に代えることができる。
(1) 第11条第1項各号のいずれかに該当することとなったとき。
(勧告及び命令)
第16条 市長は、許可者及び遺伝子組換え作物を取り扱う食品関連事業者等に対し、当該取扱いに際し、遺伝子組換え作物が、混入し、交雑し、又は自然界に落下若しくは飛散し、自生する等遺伝子組換え作物以外の作物に影響等を及ぼさないよう必要な勧告を行うことができる。
2 市長は、許可者又は食品関連事業者等が、前項に規定する勧告に従わないときは、許可者若しくは食品関連事業者等名を公表し、又は勧告に従うよう必要な命令を行うことができる。
(報告徴収等)
第17条 市長は、許可者に対して報告を求め、又はその職員にほ場等に立ち入らせ、遺伝子組換え作物、施設、書類その他の物件を検査させ、若しくは質問させることができる。
2 前項の規定による立入り、検査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第1項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたと解釈してはならない。
(1) 許可 1件につき216,400円
(2) 変更の許可 1件につき175,200円
(情報の申出)
第19条 市民は、遺伝子組換え作物の混入若しくは交雑、落下、飛散若しくは自生が生じ、又は生じるおそれがあると認められる情報を入手したときは、市長に適切な対応をするよう申し出るものとする。
第3章 地域農林水産業の振興
(地域農林水産業の振興)
第20条 市は、基本理念にのっとり、安全な食を生産するための施策、地域農水産業の振興のための施策、良質な木材の生産、水資源の確保、森林の持つ多面的機能の発揮のための地域林業の振興の施策及び森林整備のための施策を推進するものとする。
(地域食料自給率の向上)
第21条 市は、基本理念にのっとり、地産地消及び食育を推進し、地域における農林水産業を振興し、安全な食の生産の拡大を行うことにより可能な限り地域における食料自給率の向上を図らなければならない。
(農林水産業に関する団体への支援)
第22条 市は、農林水産業に関する団体が基本理念の実現に参画することができるように、その組織の効率化の支援その他団体の健全な発展を図るために必要な支援を行うことができるものとする。
(担い手の育成、確保等)
第23条 市は、認定農業者(農業経営基盤強化促進法(昭和55年法律第65号)第12条の2第1項に規定する認定農業者及び持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律第5条第1項に規定する認定農業者をいう。)その他農林水産業経営に意欲のある者が農林水産業の中心的役割を担うような構造を確立するため、農林水産業者が誇りを持って農林水産業に従事し、かつ、安定した収入が確保できるように必要な施策を講ずるものとする。
2 市は、前項の農林水産業経営に意欲のある者に加え、安全な食べ物を生産しようとする者を農林水産業の担い手として位置づけ、基本理念の達成のために必要な施策を講ずるものとする。
3 市は、社会の変化に対応できる多様な農林水産業の担い手の育成及び確保を図るための施策を講ずるものとする。
(振興施策)
第24条 市は、農林水産業の振興のため次の各号に掲げる施策を講ずるものとする。
(1) 経営の安定
(2) 流通の活性化
(3) 食品関連産業の振興
(4) 農地の確保等
(5) 自然循環機能の維持増進等
(6) 良好な定住及び交流の場の形成
(7) 中山間地域等への支援
第4章 食と農のまちづくりへの参画
(市民等の参画)
第25条 市民は、食と農のまちづくりを目指すまちの住民であることを認識し、食と農のまちづくりへの積極的な参画に努めるとともに、市が実施する施策に協力するものとする。
2 農林水産業者等は、自らが安全な食の供給者であり、食と農のまちづくりの主体であることを認識し、基本理念の実現に取り組むように努めるとともに、市が実施する施策に協力するものとする。
3 食品関連事業者等は、食と農のまちづくりを目指すまちにおいて事業活動を行っていることを認識し、地域で生産された食料を使用するように努めるとともに、市が実施する施策に協力するものとする。
(意見の提案)
第26条 市民は、市に対して、食と農のまちづくりに関する意見を述べることができるものとする。
(推進体制)
第27条 市長は、食と農のまちづくりを推進するため、市の体制を整備するものとする。
第5章 その他
(食と農のまちづくり委員会)
第28条 食と農のまちづくりに関する基本的事項及び重要事項を調査審議し、施策の円滑な実施を図るため、今治市食と農のまちづくり委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱する20人以内の委員をもって組織する。
(1) 農林水産業者
(2) 消費者
(3) 食品関連事業者
(4) 関係機関及び団体の役職員
(5) 学識経験者
3 委員会の委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合の補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 委員会は、市長の諮問に応じ調査審議し、食と農のまちづくりに関し市長に意見を述べるほか、食と農のまちづくりの施策の実施主体となることができるものとする。
5 前3項に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、市長が規則で定める。
(施策の検証と評価)
第29条 市長は、社会経済情勢の変化、財政状況等に照らして、食と農のまちづくりが市民にとって真に価値あるものとして実行されているかの評価を実施するものとする。
2 市長は、前項の評価を検証し、食と農のまちづくりの全体の調整を行うものとする。
(罰則)
第30条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(1) 第10条第1項の許可を受けないで遺伝子組換え作物を栽培した者
(2) 虚偽の申請をして第10条第1項の許可を受け、遺伝子組換え作物を栽培した者
(3) 第14条第1項の許可を受けないで許可の内容を変更した者
(4) 虚偽の申請をして第14条第1項の変更の許可を受けた者
第31条 第14条第1項ただし書きの規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、50万円以下の罰金に処する。
第32条 次の各号のいずれかに該当する者は、20万円以下の罰金に処する。
(2) 第16条第2項の規定による命令に違反した者
(委任)
第34条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則