今治市共に生きる社会づくり条例【解説書】テキスト形式 2024年(令和6年)12月 今治市 今治市共に生きる社会づくり条例 前文  私たちの年齢、性別、性的指向や性自認、障がいの有無及び国籍や文化的背景などは、それぞれ異なります。  すべての人が一人ひとりの多様性を尊重し、互いにその人らしさを認め合い、生涯にわたって安心して暮らすことができる社会が、今治市の目指す共生社会です。  本市は、平成17年に12の市町村が合併し、新しい今治市として誕生しました。令和7年に合併20周年を迎えるにあたり、新たな今治の歴史を刻む出発点として、「ふるさと今治」がこれからの20年、さらには100年後も「ずっと住み続けたいまち」となるよう、私たちは一丸となって、共生社会の実現に向けて歩み続けることを決意し、この条例を制定します。 やさしい日本語 前文  私たちは、年齢、性別、性的指向、性自認、障がいがあるかないか、国籍、文化の 違いなど、それぞれ 違います。  すべての人が 多様性を 大切にします。お互いに その人の よいところを 認めます。ずっと 安心して 暮らせます。この 3つが 今治市の 目標とする 共生社会です。  今治市は、2005年に12の 市や 町や 村が 一つ になり、新しい 今治市に なりました。2025年で 20年が 経ちます。2025年は、次の 新しい 今治の 始まりです。「ふるさと今治」が、20年後も、100年後も「ずっと 住み続けたい まち」に なるように、私たちは、みんなで一緒に 共生社会を 作ることを 決めました。そのために、この 条例を 作りました。 ※言葉の説明 ・性的指向・・・好きに なる人、好きな 人の 好み ・性自認 ・・・自分の 性別、自分の 感じる 性別 ・国籍  ・・・どこの 国の人か ・多様性 ・・・いろいろな 違い、いろいろな こと ・条例  ・・・決まり 解説 ○前文とは、条文本体の前に置かれ、制定の趣旨、目的などを強調して述べた文章のことです。 ○前文において、今治市が目指す共生社会の姿と、共生社会を実現するために、私たちは一丸となって歩み続ける決意を述べています。 第1条 目的 (目的) 第1条 この条例は、すべての人が一人ひとりの多様性を尊重し、互いにその人らしさを認め合い、生涯にわたって安心して暮らすことができる社会を実現することを目的とする。 やさしい日本語 条文 <第1条> すべての人が、多様性を 大切にします。すべての人は、お互いに その人の よいところを 認めます。そして、ずっと 安心して 暮らせる 社会を 作ります。 解 説 ○この条例を制定する目的を定めています。 第2条 定義 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) 共生社会 すべての人が一人ひとりの多様性を尊重し、互いにその人らしさを認め合い、生涯にわたって安心して暮らすことができる社会をいう。 (2) 市民 市内に在住し、又は市内で活動するすべての者をいう。 (3) 事業者 市内で事業活動を行うすべての個人又は法人その他の団体をいう。 (4) 合理的配慮 市民が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもののうち、現に解消を必要とする障壁を取り除くために必要なものであって、負担が過重でないものをいう。 やさしい日本語 条文 <第2条> この 条例で 使う 言葉の説明です。 (1)共生社会 すべての人が、多様性を 大切にして、お互いに その人の よいところを 認める 社会のことです。そして、すべての人が、ずっと 安心して 暮らせる 社会のことです。 (2)市民 今治市に 住んでいる 人や、今治市で 活動している すべての人のことです。 (今治市の 学校に 行っている 人や、今治市に 旅行に 来ている 人も、みんな市民です。) (3)事業者 今治市で 仕事を している すべての人、会社、団体のことです。 (4)合理的配慮 市民が 毎日の 生活や 社会での 生活をするときに、決まり、習慣、考え方などで 困ることが あります。これらの 困って いることを なくすために、困っている 人には 必要な 助けで、気配りや 手伝いを する人には、あまり 大変では ないことです。 ※言葉の説明 ・習慣  ・・・いつも すること 解説 ○この条例の用語のうち、認識を共通にしておきたい用語の意味を明らかにしています。 ○第1号「共生社会」について、すべての人が一人ひとりの多様性を尊重し、互いにその人らしさを認め合い、生涯にわたって安心して暮らすことができる社会と定義しています。 ○第2号「市民」について、共生社会を実現するための活動には、住民のほか、観光客なども含むと共に、学校や勤務先における教育の観点から、市内に通勤、通学する人たちの関わりも不可欠と考え、広く定義しています。外国籍の方も含みます。 ○第3号「事業者」について、市内の企業や、社会福祉法人、市民活動団体などの団体とそこで活動する人、個人で事業活動を行う人を指しており、法人格の有無や、活動目的の営利・非営利の別を問いません。 ○第4号「合理的配慮」について、共生社会の実現に当たって、市民が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの、いわゆる「社会的障壁」のうち、市民が現に解消を必要とする場合において、障壁を解消するために必要なものであって、負担が過重でないものと定義しています。この定義は障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)における合理的配慮の考え方に合わせたものです。 Point.合理的配慮について 合理的配慮とは、日常生活を送る上で、社会の中にあるバリアを取り除くために、何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応することが求められるものです。 重すぎる負担があるときでも、なぜ負担が重すぎるのか理由を説明して、別の方法を提案したり、話し合いながら、よりよい方法を一緒に探してみましょう。どのようなことが合理的配慮にあたるのかは、その人が置かれている環境によって、それぞれ異なります。大切なのは、相手を思いやるやさしい気持ちです。 ※「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の改正により、令和6年(2024年)4月1日から、障がいのある人への合理的配慮の提供義務が、行政機関等だけでなく、事業者にも拡大(義務化)されました。 ○合理的配慮の例 ・(外国人の方に対して)難しい言葉や、外来語は使わず、簡単な日本語を使う。 ・(車いすの方に対して)乗り物に乗るときに、手助けをする。 ・(杖をついた方に対して)窓口カウンターに、杖立てを設置する。 ・(視覚障がいのある方に対して)歩く速度を合わせて、周りの状況を伝えながら歩く。 ・(様々な立場の方に対して)誰にでも分かりやすい言葉や伝達手段(筆談、読み上げ、手話、拡大文字、やさしい日本語、コミュニケーションボードなど)を使う。 ※合理的配慮の内容は、個別の場面に応じて異なります。また例以外であっても合理的配慮に該当するものがあります。 第3条 基本理念 (基本理念) 第3条 市、市民及び事業者は、相互に協力しながら、次に掲げる理念(以下「基本理念」という。)に基づき、共生社会の実現を目指すものとする。 (1) すべての人が、それぞれの個性を持つ個人として尊重されること。 (2) すべての人が、お互いを認め合い、支え合い、助け合うことで、安心して生活できること。 (3) すべての人が、自分の望む形で、社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保されること。 やさしい日本語 条文 <第3条> 今治市や 市民、事業者は、お互いに 助け合います。次の 考え方を もとにして、共生社会を 作ります。この 考え方を「基本理念」と 言います。 (1)すべての人が、それぞれの 違いを 持つ 人として 大切にされます。 (2)すべての人が、お互いを認めて、支えて、助け合います。そうすれば、安心して 生活が できます。 (3)すべての人が、自分のやりたい 方法で、社会の たくさんのことが できるように なります。 解説 ○「共生社会」の実現のため、土台や前提となる考え、重要な考え、強調したい考えを基本理念として定めています。 ○「共生社会」の実現に向けた取組みの推進は、市、市民及び事業者が相互に協力しながら実施するものとし、その際の理念を、個性の尊重(第1号)、支え合い、助け合い(第2号)、社会参画機会の確保(第3号)の3つの視点で整理しています。 Point.「参加」と「参画」の違いとは 「参加」とは、単に市や地域・団体等が企画・実施するイベントなどに加わることをいいます。これに対して「参画」とは、物事を企画・検討する段階から、評価・見直しに関わることまで、自分が主体的に加わることをいいます。このように、「参加」と「参画」は、自らが物事の企画・検討段階から加わるかどうかで変わります。 第4条 市の責務 (市の責務) 第4条 市は、基本理念にのっとり、必要となる理解を市民及び事業者と相互に深めるとともに、共生社会の実現に向けて必要な施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。 やさしい日本語 条文 <第4条> 第3条の 「基本理念」に そって、今治市は、共生社会を 作るために 必要なことをします。今治市は、市民や 事業者と一緒に、いろいろなことを 考えながら、しっかりと 進めます。 解説 ○この条例において、「市」とは今治市の行政機関のことを指しています。 ○市は、基本理念にのっとり、共生社会の実現に向けた施策を総合的かつ計画的に実施しなければならないことを規定しています。 ○共生社会の実現は、市だけでできるものではなく、市民、事業者と一緒になって 達成できるものと認識しています。市は、市民、事業者と連携しながら、責務や役割を相互に認識し、連携して取組みます。 第5条 市民及び事業者の役割 (市民及び事業者の役割) 第5条 市民及び事業者は、基本理念にのっとり、必要となる理解を相互に深めるとともに、共生社会の実現に努めるものとする。 やさしい日本語 条文 <第5条> 第3条の 「基本理念」に そって、市民と 事業者は、お互いのことを 認めます。そして、共生社会を 作るために 努力します。 解説 ○共生社会の実現には、市民及び事業者の理解と協力が不可欠です。市民及び事業者は、共生社会の実現に向けた取組みを実施するよう努めるとともに、市が実施する共生社会の実現に向けた施策に協力するよう努めることを規定しています。 ※この条例では、障がいのある人を含めて、「すべての人」を対象にしていることから努力規定としていますが、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」において、障がいのある人への合理的配慮の提供は義務化されています。(第2条の解説を参照) 第6条 基本的施策 (基本的施策) 第6条 市は、共生社会の実現に向けて、次に掲げる施策(以下「基本的施策」という。)を講ずるものとする。 (1) 共生社会について学び、意識の形成を図るための次に掲げる施策 ア 学校教育、社会教育その他の教育等の場において、市民及び事業者が共生社会について学び、意識の形成を行うこと。 イ 市民及び事業者に対して、共生社会の実現に向けて必要な啓発及び広報活動を行うこと。 (2) 十分な情報のやりとりを可能にするための次に掲げる施策 ア 市の提供する情報及び市民が知りたい情報のうち必要と認められるものを誰にでも分かりやすい言葉又は伝達手段で提供すること。 イ 市民が自分の考えを相手に的確に伝えられるよう、公共の場における多様なコミュニケーション手段の確保を支援すること。 (3) 市民が安全で安心した生活ができるよう、多様性に配慮した社会基盤施設等の整備に努めること。 (4) 地域における共生社会を実現させるための次に掲げる施策 ア 市民及び事業者が本来持っている力を発揮し続けるため、共生社会の実現に資する活動を実施する市民及び事業者との連携並びに支援を行うこと。 イ 地域における市民及び事業者相互の支援体制を整備し、それぞれが役割を持ち、支え合いながら、地域課題の発見及び対応を可能とする地域づくりが行われるよう支援に努めること。 ウ 保健、医療、福祉、教育、就労その他の制度の枠を超え、又は、各制度間の連携を図りながら、市民に対して包括的かつ総合的な支援を行うこと。 (5) 共生社会に向けた推進体制の構築並びに当該体制及び具体的施策の必要に応じた改善 2 市は、基本的施策を通じて、合理的配慮が行われるよう取組むものとする。 やさしい日本語 条文 <第6条> 今治市は、共生社会を 作るために 次のことをします。これを「基本的施策」といいます。 (1)今治市は、共生社会について 学びます。そして、共生社会の考えを 作っていくために、次のことをします。 ア 市民や 事業者は、学校、社会、その他の 教育の 場所で、共生社会について 学びます。そして、市民や 事業者は、共生社会の 考えを 作っていきます。 イ 今治市は、市民や 事業者に、共生社会を 作るために 必要な 知識を 広めます。そして、今治市は、市民や 事業者に、情報を 伝える 活動もします。 (2)今治市は、十分な 情報が 伝わるように 次のことをします。 ア 今治市は、伝える 情報や 市民が 知りたい 情報の中で、今治市が 必要と 認めた情報を 伝えます。 今治市は、誰にでも わかりやすい 言葉や やり方で その情報を 伝えます。 イ 今治市は、市民が、自分の 考えを 相手に 正しく 伝えられるように 助けます。今治市は、市民が、公共の 場所で、いろいろな 伝え方が できるように 助けます。 (3)今治市は、市民が、安全で 安心して 暮らせるように、多様性を 考えた みんなのための 場所を 作るように 努力します。 (4)今治市は、地域の 共生社会を 作るために、次のことをします。 ア 今治市は、市民や 事業者が、ずっと 力を 出せるように 手伝います。 そのために、今治市は、市民や 事業者と 協力したり、市民や 事業者を 助けたりします。 イ 今治市は、地域の 市民や 事業者が、お互いに 協力が できるようにします。市民や 事業者は、一緒に 地域の 問題を 見つけ、なくして いきます。今治市は その 地域づくり を助けます。 ※言葉の説明  ・地域   ・・・近くに 住んで 生活している人たちが 集まって いる 場所  ・地域づくり・・・地域を よくするための 活動 ウ 今治市には、健康を 守ること、病気を 治すこと、生活を よくすること、学ぶこと、働くこと、その他、いろいろな 決まりが あります。 今治市は、これらの 決まりを 上手に 使って、市民を しっかり 助けます。 (5)今治市は、共生社会を 作って いきます。その中で 必要な時に、よりよい 方法を 探します。 2 今治市は、これらの「基本的施策」を 使って、「合理的配慮」が できるようにすすめます。 解説 ○共生社会の実現は、市、市民、事業者がそれぞれ、あるいは協力しながら取組むべきものと捉えています。そのための環境整備を行うのは市であると認識しており、市が取組む施策を、本条において規定しています。 ○第1項第1号では、共生の意識の形成について規定しています。様々な個性を持つすべての人が、お互いに分かり合い、支え合えるようになることが、共生社会を実現していく上での基盤であり、最も力を入れるべき施策と考えています。 ○アについては、例えば、学校教育や社会教育、家庭教育や保育などの場における、いじめ、障がい者差別、多文化への無理解などの課題についての学びに加え、教育の核となる教員や講師などへの意識啓発、研修、情報提供などを想定しています。 ○イについては、例えば、この条例の内容についての広報や、共生社会についての理解促進事業の実施などを想定しています。 ○第1項第2号では、十分な情報のやりとりを可能にするための施策について規定しています。共生社会を実現する上で、情報弱者がいなくなり、誰もが等しく情報を得られることが大切です。すべての人が安全安心に生活するため、困難に直面したときに必要な支援を受けるために、誰もが等しく情報をやりとりできることが必要であると認識しています。 ○アについては、例えば、市からのお知らせや広報、窓口での対応などにおいて、具体的、直接的、簡単な表現を用いること、公共施設等において、ユニバーサルデザインを採用するなど、誰にでも分かりやすい言葉や伝達手段で情報を提供することなどを想定しています。 ○イについては、例えば、障がい者や、日本語を母語としない人に対して、一人ひとりの状態・状況に合わせて、コミュニケーション手段を選択し、伝えたいことを正しく相手に伝え、また、相手が伝えたいと思っていることを正しく受け取ることができるようにすることを想定しています。 ○第1項第3号では、多様性に配慮した社会基盤施設などの整備に努めることを規定しています。例えば、道路の段差解消、点字ブロックや歩道の整備、施設のバリアフリー化など、主にハード面の整備を想定しています。 ○第1項第4号では、地域において共生社会の実現に向けた取組みが進むよう、主にソフト面での施策を規定しています。 ○アについては、例えば、市民、事業者との連携及びネットワークづくり、市民、事業者への支援制度の整備など、共生社会を推進する市民や事業者をエンパワメントする施策を想定しています。 ○イについては、例えば、自治会、民生委員・児童委員、消防団、学校、保育園、幼稚園、事業者など、地域で活動する団体がそれぞれ、また連携して、地域課題の発見及び対応ができるよう働きかけることを想定しています。 ○ウについては、制度の枠を超え、又は各制度間の連携を図りながら、市民に対して包括的かつ総合的な支援を行うことを規定しています。例えば、ワンストップ相談窓口などがそれにあたります。 ○第1項第5号では、共生社会に向けた推進体制の構築並びに当該体制、具体的施策において、必要に応じた改善を行うことについて規定しています。 ○第2項では、第1項で規定した基本的施策を実施することで、合理的配慮が行われる地域社会の構築につながるよう取組むことを規定しています。 附則 附則 この条例は、公布の日から施行する。 やさしい日本語 附則 この 条例は、2024年12月19日から 始めます。 解説 ○この条例は、公布の日から施行することを規定しています。